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剣道について

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  「剣道を日常生活にどう生かしたらよいか」
                                                        前会長 鳥飼健雄

剣道が単なる武道として、自分一人の身を守るだけのものならば、剣道などやらぬ方が良い。なま兵法はケガのもとで、かえって身を危うくするだけだ。

何故ならば、自分の身を守る一番良い方法は他人と争わないことだからです。他人と争わないようにするためには、心の修養が第一です。心を修養するのであれば、剣道よりもっと効率的なもの、たとえば宗教など、他に良いものがある筈です。

それでは私たちは剣道から何を学ぶのでしょうか?苦しい思いをして鍛えた身体、精神力を他の人々の幸せのために用いてこそ、剣道を学んだ意味があると思うのですが・・・・・。

ある先生は
「剣道の究極の目的は何であるか?それは捨身を学ぶことである。捨身を学んでどうするか。何に自分の身を捨てるのか。それは自分と他の人々の幸福のために身を捨てるのである。これが剣道である。」
と話されました※。

また私の師、故吉田寅之助先生は
「剣道に特定の思想はない。ただ態度があるだけだ。一生懸命にやる。必死でやる、命がけでやる。という態度があるだけだ。何に一生懸命になるか、何に命を懸けるかは、自分で探してもらいたい。私としては、出来ることならば平和のために命を懸ける人となってもらいたい。戦争は悪である。個人的に何の恨みもない者同士が殺しあう。「相手を殺さなければ自分が殺される。」こんな思いで夢中で戦ってきた。
戦後十年以上たった今も夢に見てうなされる。私はその反省にたって、平和のために命を懸ける人を育てたくてこの剣道を君たちに教えるのです。戦争は悪です。どんなことがあっても戦争をしてはならない。どうか君たちは平和のために働く人となってもらいたい。」
と、まだ中学生だった僕たちによく話をされました。

剣道の理念に
「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である。」
とあります。
ここで大切なことは剣の理法ということだと思います。実際のところ何をやっても、それなりの人間は形成されます。剣道が、防具をつけ、竹で作った棒を持って、痛くないようにして、唯打った打たれただけを楽しむのであれば、テニスやバドミントンなどと余り変わらない。心のどこかに剣を意識して初めて、仮想の内に生死が意識され、他のスポーツにはない精神的な深まりが得られると思うのです。剣道形を学ぶことが大切なわけです。

思いつくままに書きました。まとまりませんが、この中から何かを感じとり、日常生活に生かして頂ければ幸いです。

     ※森島健男範士


                 (平成2年剣開(けんかい)第二十号(編集/板橋区・発行/板橋区剣道開放団体連合会)に掲載)